とある男性患者さんとの出会い

闘病生活を送っていると、素敵な出会いをする機会が多い。
やはり、同じ病気で戦う仲間、お互いの気持ちを理解し合えるのだと思う。

この男性患者さんとは、僕が入院してまもなく出会うことになる。
病気とは思えないほど、明るい方。
だから、仲良くさせていただくのに、時間はかからなかった。
部屋は違うけど、会えば気さくに話しかけてくれる。
体の状態を聞いてきてくれる。
そして、元気になるコトバをいつも投げかけてくれる。
「自分は病気だと思っていない。それぐらい強い気持ちでいなきゃね。楽しく過ごすことが大事」

人から尊敬される方というのは、こういう方を言うんだろうな。

その方の治療に臨む姿勢も、素晴らしかった。
年齢を言うのは失礼だが、僕よりも年齢は上な方だし、体を動かすことだって大変だと感じる時もあると思う。
それでも、体が鈍ってはいけないからと、エアロバイクを漕いだり、歩いたり、積極的に体を動かす。
副作用で苦しい時も、食事を食べない!ではなく、何とか工夫して口に入れる姿勢。

僕が、副作用で辛くて食事が喉を通らなかった時、その方から、そういう苦しい状況でも食べやすい食べ物を何度もいただいた。自分のことだけでなく、常に他人を気にかけてくれるその人の好意が、本当に嬉しかった。

今思えば、僕が最後の治療で入院した時のこと。入院して1週間ほど経った頃、隣の患者さんが退院していった。誰が隣に来るのかなぁなんて考えていた数日後、その方が入院してきた。以前、僕がその方の退院を見送ったのが僕の最初の治療時、すなわち半年以上前のこと。それ以降、僕はその方と入院がかぶることはなく、最後の治療まで進んだのだが、まさか最後のこのタイミングで一緒になるとは・・・しかも今度は同部屋。

運命って、本当に面白い。

間違いなく、その最後の治療で、僕はその方を必要としていたんだと思う。
だから、こういう巡り合わせになったんだと。

最後の治療・・・忘れもしない敗血症ショックで死にかけたあの時である。
どんな症状だったかは、こちらをご覧いただきたいけど、あのヤバイ状態の時でも、その方が投げかけてくれたコトバは僕の耳にもしっかり届いてたし、勇気づけられていた。ナースコールで看護師さんを呼んでくれたりと、とにかく支えてもらった。
あの時、様々な症状がでていて、当たり前だけど、苦しさで眠ることなどできずにいて、吐き続けたりとにかく体がきつく、看護師さんたちも行ったり来たりの繰り返し。そんな状況だったから、その方の睡眠も妨げてしまっていたと思う。
それでも、励まし続けてくれて、自分のことのように心配してくれる。

本当にありがたかった。

敗血症ショックを発症した僕は、危険な状態ということで、ナースステーションの目の前の個室に移され、部屋からでることができない日が2週間近く続いたのだが、無事に敗血症ショックを乗り越えることができた。
部屋から出て、その方に元気になった姿を見せることができた時、自然と自分の目に涙があふれていた。
どんなに辛い状態でも涙することはなかったのに、その方を見たとき、なぜか涙がでていた。

それから、数日後、僕はその方の退院をしっかり見送り、今も携帯でやりとりを続けさせてもらっている。

以前、外来でお会いした時には、相変わらずの元気な姿を見ることができ、再び元気をもらった。
しかし、その時に、その方から衝撃的な話をお聞きした。
その方は、この病院で治療に入る前に、余命宣告を受けていたんだと・・・。
余命先刻を受けた状態で、あれだけ明るく強く治療に励んでいたということ・・・。
凄いとしか言いようがない。
僕自身、気持ちはポジティブだけど、この方には敵わない。
この方と出会い、多くのことを学んだ。
この出会いは、大切にしたい。

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