“白血病は治る病気だから”という励まし方

今日は、このコトバ・励まし方について僕なりの考えを書きたいと思う。
というのも、この励まし方は患者に与える精神的なリスクを少し含んでいるような気がするから。
なぜリスクがあるのか。 ポイントは以下3つ。
①白血病の種類
②治療関連死
③再発率、GVHD(移植片対宿主病)

前段として、 白血病は治る病気とは確かによく言われる話。
一昔前は不治の病なんて言われていたぐらいの病気。それが医学の進歩によって不治ではなく、治る病気になったから、おそらくそう言われるようになったんだと思う。
確かに白血病は数ある癌の中でも化学療法、所謂、抗がん剤が効きやすい癌に分類されるようになった。また、化学療法以外の治療法として造血幹細胞移植(骨髄移植、末梢血幹細胞移植、さい帯血移植)の治療実績も向上しているし、白血病治療というものは、ここ数十年で目覚ましい進歩を遂げているのだと思う。

ここからは、先ほどの①に係る部分。
ひとえに白血病と言ってもいくつかの種類がある。
以前書いたけど僕の場合は、 t(8;21)(q22;q22)を有する急性骨髄性白血病(M2) 下表のWHO分類なら、1)の(a)。 この型は、分類上は抗がん剤が効きやすいと言われる型で、予後(病気の進行具合,治療の効果,生存できる確率など,すべてを含めた見通し)が良好とされてる。(※1) leukemia06(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センターHPより)

この表を見てもらえば色々な種類(型)があることが分かると思う。(※2)
このことから「白血病は治る病気だから」という励まし方をする場合に考えてほしいことが、
(a) 型によって、予後が変わるということ。型によって、予後良好群・予後中間群・予後不良群に分かれる。
(b) (a)に関連するけど、予後中間群・予後不良群の型を診断された場合、造血幹細胞移植ありきの治療が推奨されること。
つまり、ひとえに白血病は治る病気だからと言っても、現実、予後良好なものばかりではないということ。これがまずポイント①の部分。

次に②に係る部分。
僕の治療の場合で書きます。白血病、とりわけ急性のものは、診断された時点で治療に最低でも6か月の期間を要するということが確定する。移植まですれば、それこそ1年から1年半とかもあり得る。
その長期にわたる治療の中で、治療関連死も十分あり得る。
治療関連死、つまり抗がん剤の副作用のことだが、副作用の中でもとりわけ骨髄抑制による造血機能の低下、これが本当に危険で、造血機能の低下というのは以下3つのことを意味する。
(a)白血球・好中球減少によって感染しやすい状態になる
(b)ヘモグロビン・赤血球減少によって貧血状態になる
(c)血小板減少によって血が止まりにくい状態になる

まず、(b)と(c)については、減少してきたら輸血を繰り返すことになるため著しく低下することはないが、それでも貧血によって意識がとんで転倒し、頭部を強く打ち付けて場合によっては、脳内出血となる危険性がある。僕も意識がとんで倒れたことは数度あった。
しかし、それ以上に危険なのが(a)。これは輸血はなく、自然に白血球(好中球)が増えてくるのを待つしかない。そのため白血球数が、0~100ul(正常な人は3,300~9,000ulぐらい)と停滞している期間が数週間という状態も普通にある。
僕はその期間に何回も感染したが、その中でもとりわけ敗血症ショックとなった時は本当に危険な状態だった。詳しくはこちらを見てほしい。
つまり、自分の免疫力がかなり低下している状態なので、重篤な感染症にかかる可能性があり、白血病を治す前にそれで命を落とす可能性があること。これがポイント②の部分。

次に③に係る部分。
これは治療終了後の話になるんだけど、白血病は治る病気と言っても再発率が60%と高い病気であり、癌なので5年間再発しない状態を維持しないと完治とならないこと。(もちろん僕は1か0かの投稿でも書いたように、再発率は気にしていないが。)
それだけ長い期間闘わなくてはいけない。これがポイント③の1つで、もう一つはGVHD(移植片対宿主病)。
これは、造血幹細胞移植した患者さんが対象となる。
まず造血幹細胞移植とは、白血病によって正常な血液を作ることが困難となった患者に対して、提供者(ドナー)の造血幹細胞を移植して正常な血液を作ることができるようにする治療のこと。そして、この移植をすることによって、提供者(ドナー)の細胞に含まれるリンパ球が患者の組織を非自己と認識して患者さんの諸臓器を攻撃する反応が起こる。これがGVHD(移植片対宿主病)。 どんな症状が出るかというと、以下。(もちろん人それぞれ。)  

●急性GVHD(移植後3か月以内に発症)
皮膚 発赤、発疹、かゆみ、水疱
消火器 吐き気、腹痛、下痢
肝臓 黄疸

 

●慢性GVHD(移植後3か月以降に発症)
皮膚がカサカサになる、固くなる
目が乾く(ドライアイ)
口が乾く、味覚障害
黄疸、肺機能低下
息が苦しい(息切れ)

 

●晩期障害の主なもの
(移植後数年以上経過して起こる合併症)
白内障
性腺機能障害(不妊)
骨粗しょう症
大腿骨骨頭壊死
肺炎、二次性がん など

このように造血幹細胞移植は、血液癌の患者からしたら究極の治療法だと思うが、再発率が0%になるわけではないし、再発リスクとは別にGVHDとも向き合っていかなければいかなくなる。芸人のカンニング竹山さんの相方さんも、移植後GVHDで肺炎を発症し亡くなっている。
ポイント③をまとめると、白血病は治ると言っても、治った後も(他の癌も同じだが)再発との闘いが5年間続き、そして移植された場合はGVHDとも向き合っていかなければいけなく、治療後もこういったリスクを乗り越えていかなければいけないこと。

以上長々書いてきてしまったけど、「白血病は治る病気だから」というコトバは、もちろん間違ってはいないけど、患者からしたら今書いてきたように、これだけ多くの山を乗り越えなくてはいけなく、場合によっては治療中に命を落としてしまう可能性もある。
診断を受けた時や治療の現実を知った時など患者団さんは精神的に落ちる時が多い。そんな中、励ます側が安易にこのコトバを言うと、「あなたに何がわかる?」「白血病のこと知らないくせに」など、逆に相手を精神的に追い込んでしまう可能性をもっていると思う。全ての患者さんが僕のようにポジティブに考えられるわけではなく、精神的に追い込まれてしまう患者さんの方が多いと思う。このコトバに限らず、ちょっとした一言が重くのしかかったりする時もある。

「じゃあ言わなければ良いのか?」といったらそうではなく、「白血病は治る病気だから」と励ます場合でも、ただ世間一般に言われてるからという認識のもと言うのではなく、白血病というものがどんな病気なのか、どういった治療を行うのか、そのあたりを認識してあげた上で寄り添ってあげると、患者さんの心の負担は少し楽になるのかな、と思います。
患者さんの心のケアは、本当に大切だと思うので。

以上が今回書きたかった内容。患者さんももちろん大変、だけど支える側・励ます側も本当に大変。
今回書いたことが、支える側の人に少しでも役立てば嬉しい限りです。

読んでいただき、ありがとうございます。

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